ジアルジア
本日休診より 2003.6.25府医師会ニュース
 縁あって引き取った複数匹の猫が、拙宅にはおります。皆、野良出身ですが、昨今のペットブームを反映して多士済々です。

 2月に動物保護センターから軟使のソマリを引き取りました。遺棄された状況は大変悲惨なものだったそうです。保護直後から数カ月間、何度も調べたのですが、軟便の原因が分かりません。

活発な上、見事な毛並みと体躯なので、「ストレス性」に獣医さんと私の意見が落ち着きかけた頃、4月になって先住のアビシニアンが急激にやせ始め、移しい血便を見るようになりました。慌てて便を調べたところ、顕微鏡下にランプル鞭毛虫がうようよ泳いでいました。

この猫は食餌性アレルギーの治療でプレドニゾロンを1月より服用させており、そのため「猫同士の挨拶」の際に伝染したランプル鞭毛虫が爆発的に増殖し、劇症化したと考えられます。

 しかし結局、肝心のソマリにも他の猫にも、ランプル鞭毛虫ば検出されないまま、一斉に(人畜共通感染症なので私にも)メトロニダゾールの投与を開始しました。2日後には便の性状が2匹とも正常化し、やせた猫も猛烈な食欲を示し姶めました。感染症診断の難しさを痛感する一方で、ステロイド剤を投与中の猫が居合わせたという「偶然」によって診断が確定したことにも驚いたのでした。

 さて、AIDS、インフルエンザ、SARSと、感染症の脅威に私達は曝されています。人類史は感染症との闘いの歴史でもあり、自分のごく身近にもあることを再認識した事件でした。 (猫)