耐性結核の治療
Clinical Policies and Protocols Bureau of tuberculosis Control New York City Department of Health Vrd edition 1999より抜粋

@First line drugs(a):最も強力な抗菌作用を示し,菌の撲滅に必須の薬剤;RFP,INH,PZA
AFirst line drugs(b):主に静菌的に作用し,@との併用で効果が期待される薬剤;SM,EB
Bsecond 1ine drugs:@,Aに比し抗菌力は劣るが,多剤併用で効果が期待される薬剤;KM,TH,EVM,PAS,CS
耐性パターン
治療内容
治療期間
No1.
INH:R
SM:±
RFP、PZA、EB
●進行例では4位の薬剤(キノロン、アミノグリコシド、CPM)追加
●NH低濃度耐性(0.2)、高濃度感受性(1.0)ではINH900mg週2回投与、このレジメでは少なくとも2剤から3剤(推奨)の感受性薬を含むこと
●PZA無使用あるいは2ヶ月以内のPZA使用ならRFPとEBを12ヶ月
●少なくとも2ヶ月以上のPZA使用であればRFPとEBでトータル9ヶ月。
●培養陰性化後6〜9ヶ月(長いほうがよい)
●アミノグリコシドまたはCPM使用例は培養陰性化後4ヶ月で中止
●進展例、培養陰性遅延例では注射剤を培養陰性化後6ヶ月使用
No2.
RFP:R
SM:±
オプションA:
●INH、PZA、EB、アミノグリコシドまたはCPM
SMが耐性ならCPMまたは他のアミノグリコシド、
INH、RFPだけで10日以上治療されている場合はフルオロキノロンをこのレジメに加える
培養陰性後18ヶ月
●ミノグリコシド、CPM使用例は●培養陰性後4〜6ヶ月で中止
●進展例、培養陰性が遅延する例では培養陰性後6ヶ月使用
●培養陰性化後は週2〜3回の注射に変更
オプションB:
●SM耐性がない場合、INH、PZA、SM
上記はHIV反応陰性例で研究成績あり RFPなしのレジメで1年以下で高い有効性
●SMは毎日または間欠で9ヶ月使用
●トータルで9ヶ月、培養陰性化後は週2〜3回の注射に変更
●4ヶ月治療後でも培養陰性化しないものは外科治療を考慮
No3
INH:R
EB:R
SM:±
●RFP,PZA,フルオロキノロンにアミノグリコシドまたはCPM
●SM耐性が分かっている場合はSM以外のアミノグリコシドまたはCPM
●INH、RFP、PZA,EBで1〜3ヶ月治療後INHとEBが耐性と分かった場合はINHとEBは中止し、RFPとPZAは続行し、少なくともフルオロキノロンとできるかぎりCPMまたは適当なアミノグリコシドを追加。
●HIV陽性、陰性にかかわらず培養陰性化後9〜12ヶ月または6ヶ月(長いほうがよい)
●アミノグリコシドまたはCPM使用例は培養陰性化後4ヶ月で中止
●進展例、培養陰性遅延例では注射剤を培養陰性化後6ヶ月使用
No4.
INH:R
RFP:R
SM:±
●PZA、EB、フルオロキノロンとアミノグリコシドまたはCPM(毎日または週5回)

I●NH、RFP、PZA,EBで1〜3ヶ月治療後INHとRFPが耐性と分かった場合はINHとRFPは中止し、PZAとEBは続行し、少なくとも2剤−フルオロキノロンとできるかぎり適当なアミノグリコシトまたはCPM゙を追加。
●HIV陰性で無空洞症例とHIVの危険因子のない症例では培養陰性化後18ヶ月
●空洞例、HIV陽性例、免疫低下例、HIV検査を拒否するHIV感染リスク例では培養陰性化後24ヶ月
●アミノグリコシドまたはCPM使用例は培養陰性化後6ヶ月で中止
●進展例、培養陰性遅延例では注射剤を培養陰性化後6ヶ月以上使用
●注射薬の間歇投与は培養陰性化後に行う
●リファブチンが感受性で追加した場合は、RFP使用のレジメより治療期間は短縮してよい
●4ヶ月治療後でも培養陰性化しないものは外科治療を考慮
No5.
INH:R
RFP:R
EB:R
SM:±
PZA、フルオロキノロンと適当なアミノグリコシドまたはCPM
加えて感受性のある少なくとも1または2剤second-lineの薬剤を使用(EB、CS、PAS)
●SMが最初の治療で耐性ならSM以外のCPMまたは他のアミノグリコシドを使用
●1〜3ヶ月INH、RFP、EB、PZA治療後INH、IRFP,EBの耐性が分かった場合はINH、RFP、EBを中止し、PZAを続行しフルオロキノロンアミノグリコシトまたはCPM゙と他の感受性薬剤2剤を追加。
●HIV陰性で無空洞症例とHIVの危険因子のない症例では培養陰性化後18ヶ月
●HIV陽性例、免疫低下例、HIV検査を拒否するHIV感染リスク例では培養陰性化後24ヶ月
●アミノグリコシドまたはCPM使用例は培養陰性化後6ヶ月で中止
●進展例、培養陰性遅延例では注射剤を培養陰性化後6ヶ月以上使用
●注射薬の間歇投与は培養陰性化後に行う
●リファブチンが感受性で追加した場合は、RFP使用のレジメより治療期間は短縮してよい
●4ヶ月治療後でも培養陰性化しないものは外科治療を考慮
No6.
INH:R
RFP:R
PZA:R
SM:±
EB、フルオロキノロンと適当なアミノグリコシドまたはCPM
加えて感受性のある少なくとも1または2剤second-lineの薬剤を使用(EB、CS、PAS)
●SMが最初の治療で耐性ならSM以外のCPMまたは他のアミノグリコシドを使用
●1〜3ヶ月INH、RFP、EB、PZA治療後INH、IRFP,PZAの耐性が分かった場合はINH、RFP、PZAを中止し、EBを続行しフルオロキノロンアミノグリコシトまたはCPM゙と他の感受性薬剤2剤を追加。
●HIV陰性で無空洞症例とHIVの危険因子のない症例では培養陰性化後18ヶ月
●HIV陽性例、免疫低下例、HIV検査を拒否するHIV感染リスク例、有空洞例では培養陰性化後24ヶ月
●アミノグリコシドまたはCPM使用例は培養陰性化後6ヶ月で中止
●進展例、培養陰性遅延例では注射剤を培養陰性化後6ヶ月以上使用
●注射薬の間歇投与は培養陰性化後に行う
●リファブチンが感受性で追加した場合は、RFP使用のレジメより治療期間は短縮してよい
●4ヶ月治療後でも培養陰性化しないものは外科治療を考慮
No7.
INH:R
RFP:R
EB:R
PZA:R
SM:±
フルオロキノロンと適当なアミノグリコシドまたはCPM
加えて感受性のある少なくとも1または2剤second-lineの薬剤を使用
●SMが最初の治療で耐性ならSM以外のCPMまたは他のアミノグリコシドを使用
●rifabutinが感受性の場合は使用する
●1〜3ヶ月INH、RFP、EB、PZA治療後INH、IRFP,EB、PZAの耐性が分かった場合は4剤全部中止し、フルオロキノロンアミノグリコシトまたはCPM゙と他の感受性薬剤少なくとも2〜3剤を追加。(TH、CS、PASなど)
●HIV陰性で無空洞症例とHIVの危険因子のない症例では培養陰性化後18ヶ月
●HIV陽性例、免疫低下例、HIV検査を拒否するHIV感染リスク例、有空洞例では培養陰性化後24ヶ月
●アミノグリコシドまたはCPM使用例は培養陰性化後6ヶ月で中止
●進展例、培養陰性遅延例では注射剤を培養陰性化後6ヶ月以上使用
●注射薬の間歇投与は培養陰性化後に行う
●リファブチンが感受性で追加した場合は、RFP使用のレジメより治療期間は短縮してよい
4ヶ月治療後でも培養陰性化しないものは外科治療を考慮
No8.
INH:R
RFP:R
EB:R
SM:R
KM:R
TH:R
Rifabutin:R
”strain W”
●この菌種を有すると思われる患者ではINH、RFP、PZAで治療開始し、さらに感性の他の抗結核剤3剤を加える。
3剤はSPFX(またはOFLX)、CS(VB結合)、CPMの筋注または静注
●菌種が確定された場合はRFPを中止し、PZA(感受性なら)、LVFX、CS、CPMで治療
●この菌種に対する治療で有効性のある抗結核剤はPASとclofazimineである。後者の抗結核効果は疑問視されている
●アミカシンはKMと交差耐性があるため経験的に使用しない、
●この菌種はINHの低濃度で耐性であるので、必要ならINHの高容量900mg週2回の間歇投与。INHの効果には信頼性がない。
●HIV陰性で無空洞症例とHIVの危険因子のない症例では培養陰性化後18ヶ月
●HIV陽性例、免疫低下例、HIV検査を拒否するHIV感染リスク例、有空洞例では培養陰性化後24ヶ月
●アミノグリコシドまたはCPM使用例は培養陰性化後6ヶ月で中止
●進展例、培養陰性遅延例では注射剤を培養陰性化後6ヶ月以上使用
●注射薬の間歇投与は培養陰性化後に行う
●リファブチンが感受性で追加した場合は、RFP使用のレジメより治療期間は短縮してよい
4ヶ月治療後でも培養陰性化しないものは外科治療を考慮

MDR結核の治療失敗例でのSPFXの使用
失敗例とは3〜6ヶ月治療後でも培養陽性が持続、XPの悪化あるいは数ヶ月陰性化していた培養が陽性になった症例。
SPFXはCPFX、OFLX、LVFXより抗酸菌に対して2〜8倍抗菌力がある。SPFXの効果はINHに匹敵するもである。
CPFXまたはOFLXに耐性はほとんどない。
常用量は400mg(1T:200mg)を1日1回投与。
副作用は以下の2つを除いて他のフルオロキノロンと同じである。
@光線過敏性
Aトルサ
ードドポアント(QT延長症候群) 抗不整脈剤との併用で起こる。                                        
参考)抗ハンセン病薬(保険適用薬)
 B.クロファジミン Clofazimine (CLF, B663, G30320)
イミノフェナジン系の染料である。
 通常、併用療法で用いられ、成人は月1回300mgをできるだけ治療者の面前で服用させ、他の日に毎日50mgを食後に自己服用する。小児には月1回150mgをできるだけ面前で服用させ、他の日に50mgを隔日に自己服用する。
 ヒトに200mg単回経口投与で8時間後に最高血漿濃度(0.4μg/ml)に達し、血中半減期は10.6日である。本剤は皮膚、脂肪組織中および細網内皮系のマクロファージ中に蓄積することから血中濃度上昇および尿排泄速度は遅く、血中半減期、除去半減期は長い。マクロファージのライソゾーム酵素の活性化、らい菌のDNA複製阻害をして静菌作用と弱い殺菌作用を示すとの報告があるが、その正確な作用は明らかではない。服用により皮膚が茶褐色に変色すると同様に尿も着色する。
 抗炎症作用を有することから、らい性結節性紅斑(erythema nodosum leprosum; ENL)患者の治療にも用いられている。ENLに対しては通常、成人1日1回100mgを食後服用させる。ENLが安定したら週3回に減量する。ENLの場合の服用期間は3カ月以内。DDS, RFPと交叉耐性を示さない。
 本剤の主な副作用は、皮膚着色、腸閉塞、皮膚乾燥、下痢などがある。
 1カプセル50mgが、ランプレン(Lampren, ノバルティス)の名で販売されている。
参考) QT prolongation syndrome
心電図の高度QT延長(QTc 0.46秒以上),トルサードドポアント*torsade de pointesという心室頻拍およびこのための失神発作や急死を特色とする症候群である.狭義には遺伝性QT延長症候群を意味し,広義にはQT延長を認め遺伝関係の不明な特発性QT延長症候群,さらに二次性QT延長例も含まれる.遺伝性QT延長症候群としてはJervell and Lange‐Nielsen症候群(先天性聾唖を伴う常染色体劣性遺伝),Romano‐Ward症候群(先天性聾唖を伴わず常染色体優性遺伝)の2種がある.また二次性の原因としては薬物(抗不整脈薬,フェノチアジン系など),電解質異常(低K血症,低Mg血症,低Ca血症など),中枢神経疾患(クモ膜下出血など)その他がある.
私見)耐性結核の治療を日本流にアレンジずると 以下のようになるかと思われる
@ INH耐性→RFP、EB、PZA
※ INH1.0で感受性の場合INH900mg週2回投与を併用可能
※ PZAなしまたは2ヶ月で中止例はRFP、EBは12ヶ月使用、
※ PZA使用2ヶ月以上ならRFP、EBは6ヶ月使用
培養陰性後6〜9ヶ月
SMは培養陰性後4ヶ月で中止(進行例は6ヶ月)
A RFP耐性
 オプションA:INH、EB、SM、PZA
※ RFP、INHのみで治療されていた場合はLVFXを加える
  培養陰性後18ヶ月で終了
  SMは培養陰性後4〜6ヶ月で中止、培養陰性後は週2〜3回に変更
 オプションB:INH、SM、PZA
  9〜12ヶ月治療で有効とのデータあり
  SMは毎日または間欠投与で9ヶ月使用、培養陰性後は週2〜3回に変更
BINHとEBが耐性の場合→RFP、SM、PZA、(+LVFX)
※すでにINH、RFP、EB、PZAで治療中の場合はLVFXとSMを加える。
 培養陰性後9から12ヶ月または6ヶ月
 SMは培養陰性後6ヶ月で中止
CINHとRFPが耐性→EB 、PZA、LVFX、SM(毎日または週5回)
 培養陰性後12ヶ月〜24ヶ月(進展例は長い目に)
 SMは培養陰性後6ヶ月で中止
DINH、RFP、EB耐性→PZA、SM、LVFX
※すでにINH、RFP、EB、PZAで治療中の場合はTH、CS、PASのうち感受性のあるもの1剤または2剤追加
 培養陰性後12〜24ヶ月
 SMは培養陰性後6ヶ月で中止
※4ヶ月治療後でも培養陰性化しないものは外科治療を考慮
EINH、RFP、PZA耐性→EB、LVFX、SM(毎日または週5回)
※すでにINH、RFP、EB、PZAで治療中の場合はTH、CS、PASのうち感受性のあるもの1剤または2剤追加
 培養陰性後18ヶ月、有空洞例、進行例は24ヶ月
SMは培養陰性後6ヶ月で中止(進行例は6ヶ月以上使用)
※ 4ヶ月治療後でも培養陰性化しないものは外科治療を考慮
FINH、RFP、PZA、EB耐性→LVFX、SMとTH、CS、PASのうち感受性のあるもの1〜2剤
※ すでにINH、RFP、EB、PZAで治療中の場合はTH、CS、PASのうち感受性のあるもの2〜3剤を追加
 培養陰性後18ヶ月、有空洞例、進行例は24ヶ月
SMは培養陰性後6ヶ月で中止(進行例は6ヶ月以上使用)、培養陰性後は間歇投与
※ 4ヶ月治療後でも培養陰性化しないものは外科治療を考慮
GINH 、RFP、EB、SM、KM、TH、Rifabutin耐性
 LVFX、CSと感受性のあるアミノグリコシド(アミカシンはKMと交差耐性あり不可)
 INH1.0感受性ならINH900mg週2回投与を追加
 培養陰性後18ヶ月、有空洞例、進行例は24ヶ月
 アミノグロコシドは培養陰性後6ヶ月で中止(進行例は6ヶ月以上使用)、培養陰性後は間歇投与
 ※4ヶ月治療後でも培養陰性化しないものは外科治療を考慮
注)
耐性薬剤は原則的に中止する
SM耐性の場合は他のアミノグリコシドに変更(エンビオマイシンEVM、KMなど)
LVFX耐性の場合は他のフルオロキノロンに変更

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