肺非結核性抗酸菌症の診断基準(結核病学会基準) 2003年
1. 臨床的基準
   肺の慢性感染症に伴う典型的な症状(咳,喀痰,全身倦怠感,喀血,息切れ)や所見(発熱,体重減少,赤沈の亢進,CRPの増加等)のいずれかがあること,かつ症状や所見を呈しうる他疾患(結核,癌,真菌症,肺炎等)が否定できるあるいはそれらの疾患に適切な治療を行っても症状や所見が悪化すること

2. 画像的基準
  a) 胸部X-Pで多発性結節か空洞か2カ月以上続く浸潤影があること(1年以上前からある陰影では徐々に悪   化していること)
  b) HRCTで多発性の小結節か肺野の小結節を伴うもしくは伴わない多発性の気管支拡張所見があること

3. 細菌学的基準
  A) M.avium complex
    a) 1年以内で少なくとも3回の喀痰もしくは気管支洗浄液について
    抗酸菌塗抹陰性の場合は培養陽性が3回, 抗酸菌塗抹陽性の場合は培養陽性が2回
    b) 喀痰が得られず気管支洗浄液を1回採取できた場合
    培養が100コロニ-以上または塗抹が2+(ガフキー5号相当)以上
    ただしHIV陽性を除く全身性の免疫低下がある場合,上記基準の培養を50コロニ-以上とする
  B) M.kansasii
    a) 1年以内で少なくとも2回の喀痰もしくは気管支洗浄液の培養が陽性(菌量は問わず)
    b) 喀痰が得られず気管支洗浄液を1回採取できた場合で培養が陽性(回数・菌量は問わず)
  C) その他の菌種
    a) 1年以内で少なくとも3回の喀痰もしくは気管支洗浄液について
     抗酸菌塗抹陰性の場合は培養陽性が3回,抗酸菌塗抹陽性の場合は培養陽性が2回
    b) 喀痰が得られず気管支洗浄液を1回採取できた場合
     培養が100コロニ-以上,または塗抹が2+(ガフキ-5号相当)以上
     ただし全身性の免疫低下がある場合とHIV陽性でCD4<200の時は上記基準の培養を50コロニ-以上と     する
  D) 全ての菌種共通に下記条件のいずれかを満たした場合
    a) 気管支や肺の生検組織からの培養陽性(菌量問わず)
    b) 気管支や肺の生検組織に肉芽腫か抗酸菌が認められ,かつ喀痰または気管支洗浄液からの培養陽      性(菌量問わず)
    c) 通常無菌部分(胸水,骨髄,血液,髄液等)からの培養陽性(菌量問わず)

4. 肺野孤立結節例
  画像上の孤立結節を外科的に完全に切除した例で,組織が類上皮細胞肉芽腫でありかつ組織から病原性非結核性抗酸菌が培養された場合(菌量問わず),臨床的基準と画像的基準を満たさなくても例外的に肺非結核性抗酸菌症と診断してよい  
注 1: 肺非結核性抗酸菌症の診断は肺野孤立結節手術例を除き,上記臨床的・画像的・細菌学的基準の      すべてが満たされた場合のみ行う
注 2: 基準中a)b)c)の各項目はいずれかを満足すればよい