大阪市の結核対策(市議会答弁)
平成16年2・3月大阪市会 定例会常任委員会
(民生保健・通常予算)-03月12日−02号】
◆辻淳子委員 
 それでは、続きまして結核についてお聞きしたいと思います。
 市民の健康にとって、大阪市で結核罹患率が非常に高くなっているということは深刻な事態であると常々思っております。結核は既に昔の病気であると思われておりますけれども、最近新聞紙上を見ていますと、昨年でしたか大阪市内の中学校でもありましたが、市内の学校、事業所での集団感染の事例がいまだに見受けられます。
 全国的には結核罹患率は平成9年から3年連続で上昇したため、平成11年、国が結核緊急事態宣言を発し対策が強化された結果、患者は減ってきていると聞いておりますけれども、最近の大阪市の状況はどのようになっているのか、お聞かせください。
◎半野田健康福祉局保健所感染症対策課長 お答え申し上げます。
 国の結核緊急事態宣言におきましては、特に高齢の方、定まった住所のない方、治療を中断した方などの患者が著しく増加しましたため、これらの方々への対策強化が必要とされました。この宣言に沿いまして結核検診等各種対策を推進してまいりました結果、人口10万人当たりの新登録患者数であります結核罹患率は、平成10年の 104.2から平成14年では74.4にまで約30%減少しております。新登録患者数で申し上げますと 2,705人から 1,949人へと 756人減少しております。しかしながら、罹患率は全国平均25.8の約3倍となっておりますので、今後も対策の手を緩めることなく改善に努めてまいりたいと考えております。

◆辻淳子委員
 大阪市の結核罹患率は順調に回復しているということなんですけれども、それでも全国平均と比べて3倍近いというのは、もうやはりかなり大きな数字ですし、市民にとっても大きな不安を与えていると思います。具体的にどのような対策を実施してこられたのか、お聞きしたいと思います。

◎半野田健康福祉局保健所感染症対策課長 お答えいたします。
 平成13年2月に策定をいたしました大阪市結核対策基本指針「STOP結核」作戦では、本市の結核罹患率を平成10年の 104.2から10年間で50以下に半減させることを目標にしております。
 そのための施策としまして、事業所や学校などで人に感染させるおそれのある患者が発生しました場合、保健所が各区保健福祉センターと連携し、迅速に情報の収集・分析を行った上で接触者集団検診を実施することとしております。検診を受ける機会が少ない零細企業の従事者、自営業者に対しましては定期健康診断の受診勧奨を行いますとともに、小学校などで無料結核検診を実施しております。平成13年から市内全域で服薬を直接確認する結核短期療法、いわゆるDOTSを実施するなど各種対策を実施しております。その結果、結核罹患率は平成12年の95.0から平成14年は74.4へと22%減少し、着実に成果を上げておるところでございます。

◆辻淳子委員
 ありがとうございます。
 DOTSといいまして看護師がわざわざ自宅を訪問して薬を飲ませると、そういう大変なこともやっていただいてるということなんですね。そういった状況で大阪市の状況をお伺いしましたけれども、西成区にありますあいりん地域におきましては特に結核の患者が多発しております。その状況とどういったふうな施策を実施しておられるのか、お伺いしたいと思います。

◎半野田健康福祉局保健所感染症対策課長 お答え申し上げます。
 あいりん地域におきましては高齢の方、定まった住所のない方が多く、重症で発見されたり、合併症を併発されるなど治療に長期間を要しますほか、途中で治療を中断される方もあり、平成10年の新登録患者数は 577人と非常に多くなっております。しかし、各種施策を推進してきました結果、平成14年には 287人へと半減いたしましたが、罹患率で申し上げますと 956.7で全国平均25.8の37倍と極めて高くなっております。
 施策を具体的に申し上げますと、あいりん総合センター前での検診を毎月実施しておりますほか、臨時夜間緊急避難所や年末年始の南港臨時宿泊所の入所者に対します検診、保健所分室における結核療養相談指導や結核予防学習会を実施しております。また、治療中断をなくし適正な期間で治療が終了できますよう、全市域に先駆けまして平成11年9月からあいりん地域でDOTSを実施してまいりました。

◆辻淳子委員
 大阪市としてもいろいろな対策を実施されており、その成果は着実に上がっているようですけれども、これからも結核を封じ込めるための積極的な施策を実施していく必要があると思います。
 例えば結核専門病院を退院された患者さんの中には、DOTSのために看護師さんに家に来てほしいと思う人もあれば、また近くの診療所や薬局などでDOTSをしたいと思う方もあるのではないでしょうか。それぞれの人に対応するのは大変かもしれませんけれども、結核患者を減らすためには大切なことだと思います。見解をお聞かせください。

◎下内健康福祉局医務監兼保健所保健主幹 お答え申し上げます。
 委員御指摘のように、現在まで結核罹患率は順調に減少してきているとはいうものの、今なお全国平均の3倍近い状況にあり、今後もさらに創意工夫を凝らした結核対策を推進していく必要があると考えております。
 そこで、市域全体で実施しています在宅訪問型DOTSに加えまして、委員御提案の趣旨を踏まえ、患者さんの身近なかかりつけ薬局やかかりつけ医でDOTSを実施し、結核罹患率の改善に努めてまいりたいと考えております。さらに、あいりん地域においても広報活動を積極的に行うとともに、労働者の支援を行っているNPO等と連携して結核を早期に発見し、さらなる患者の減少に努めてまいります。