あいりん地区結核患者が5年間で半減
毎日新聞 2004.11.24夕刊
 高齢化や栄養不良を背景に「世界最悪の結核曜意地帯」と言われた日雇い労働者の街・あいりん地区(大阪市西成区)で、罹患率が過去最悪の全国平均の50倍に達した98年以降、この5年間で半減したことが同市保健所の調査でわかった。

世界保健機関(WHO)が勧告する治療法「DOTS」を進めてきたことなどが奏功。しかし、大阪市の催患率は全国の自治体で依然突出し、先進国の中でも日本が「最悪の感染国」。対策を自治体任せにしてきた国の姿勢も問われている。

 面積0.62平方`bに約3万人暮らすすあいりん地区では90年代、新たな患者が毎年500人前後発生。ピークの98年には最多の577人に達し、罹患率(人口10万人当たりの患者数)はカンボジアや南アフリカなどと比べて2倍近い1923.3人となった。

 WHOによると、重症患者は症状がなくなっても約半年の服薬が必要で、中断すると薬が効かない耐性菌をばらまく恐れがある。・同地区では、職探しで服薬を中止する患者が3割超にも達していた。市は99年に、地区内の大阪社会医療センターで1日1回のDOTSを開始。今年3月までに167人に実施し、152人が完治した。

 この結果、新規患者数は03年に261人まで低下し、罹患率は5年前の2分の1以下の870.0人となった。同地区が押し上げていた市全体の層患率も98年までの100以上から03年は68.1まで下がった。それでも政令市の中では層患率がワースト2位の名古塵市の約2倍に達し、全国最悪。同保健所の玉置寛良・結核対策係長は「まだ検診に来ない患者も多く、どうやって治療につなげるかに腐心している」と打ち明ける。

 一方、厚生労働省結核感染症課の岡田文彦・結核対策係長は「あいりん地区の罹患率の高さは、国として放置できない課題。ただ、罹患率率は下がってきているので、市には引き続き地域の実情に合った対策をとってもらいたい」と話している。
DOTS
 薬を確実に服用してもらうため、医師や看護師の前で服薬してもらう治療法。Directorty Observed Treatment Short-courseの略。WHOは政府の予算措置を伴う積極対策も求めている。結核はHIVに並ぶ「三大感染症」の一つで、死者は毎年200万人に上っているとされる。