複十字章
新日本製鐵人事・労政部主任医長 金山知新
『切手で医学散歩』より medical Tribune 2005.3.24
 3月24日は世界結核デー。そこで結核予防運動のシンボルマーク“複十字章”を取り上げる。

1902年10月23日にベルリンで開かれた第1回国際結核会議で,フランス代表から結核予防運動のシンボルとして提案されたこのマークが全会一致で採択されたのが始まり。

元来複十字章The Double Barred Red−CrossはBenedictineと呼ばれる宗教的なシンボルで,9世紀ころキリスト教徒が墓を盗掘から守るために墓石に刻んだのが始まりとされる。

1903年,米国結核予防協会が複十字章を採用し,太さ1,縦13,横7など細かい寸法を決めたが,その際2本の横棒の長さは同じだった。結核予防切手に最初に複十字章が描かれたのは1925年ベルギー発行の結核予防切手(@1925年)で,看護婦が頭上に掲げる赤い複十字章の横棒の長さは微妙だがほとんど同じに見える。しかし,同じベルギーの切手でもA(1953)では明らかに上の横棒が短い。

 一方,日本では1923年に創立された自然療養所と姉妹団体の複十字会が米国規格の複十字章を結核予防のシンボルマークと定め,戦後1946年には結核予防会もこの複十字章とAnti−tuberculosisAssociationの頭文字ATAを組み合わせたバッジをつくった。

また,1952年から結核予防会が毎年発行している結核予防シールは複十字シール募金として50年以上続いているが,そこに措かれている複十字章の横棒は凡帳面にピッタリ同じ長さ(B)。これもお国柄だろうか。

く参考文献〉小林佑吉:結核予防運動のシンボルマーク,医学切手友の会機関紙ステトスコープNo99,1989.

@

A

B