結核医療の基準とその解説(平成10年版抜粋) |
SM、INH、RFPは常用量で血中濃度はMICの10〜20倍になるが、EBは1.0g服用で2倍程度。 SMは細胞膜浸透性が悪く、髄液移行も悪い。 PZA、INH、RFPは組織移行性、細胞膜浸透性ともよい。 PZAは髄液腔への移行性が高い。 TH、CS、EBはlag Periodの問題で間歇投与には向かない。 INHの不活化速度には人種差がみられる。(副作用の発現頻度) マウスの実験では細胞免疫の低下した例ではPZAの有効性が高い。糖尿病合併例では自然耐性菌が免疫能の不足で自己処理が出来ず再増殖するため再発が多いと考えられる。 |
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PCR法の問題点 治療経過の判定に使うのは現時点では適切ではない。外国でも現時点では治療の開始にも中止にも用いるべきではないとして一般的な使用は認可していない。 ○日本結核予防会の勧告(1995) 結核疑いで従来法陰性でPCR法のみ陽性は疑陽性を考え、臨床所見、胸部XPを併せて慎重に判断すべき。特に気管支鏡検査の結果では慎重に判断すること。 塗抹陽性は喀痰1mlに5000匹以上の菌が存在、1000〜2000匹では陰性となる。PCR法では1匹でも陽性となる。 PCR結果だけで感染性、命令入所をとするのは誤りである。 |
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薬剤感受性試験の問題点 @普通法とマイクロタイター法が使われているが施設間で大きなばらつきがある。 マイクロタイター法は迅速に判定(1〜2週間)できるが耐性判定が出やすい傾向あり。 (注:マイクロタイター法では耐性結果が出やすい傾向) A直接法は(喀痰そのもので行う)3〜4週で判定できるが、アルカリ処理するため菌数が減少し、感受性ありの結果が出やすい。信頼性は間接法(分離培養した菌で行う)の方が高い。 B日本での耐性判定濃度は、諸外国のデータと比べ少し高い濃度に設定されている。 BINH(0.1μ耐性、1μ感性)、EB(2.5μ耐性、5μ感性)の低濃度耐性には両薬剤は効きにくい C耐性判定は1回だけでは困難で、排菌の続く限り月1回の耐性検査を行う。 D現時点ではPZAには耐性判定濃度が設定されていない。 (注:最近では可能になりつつある) ESM、KM、EVMでは長期使用排菌持続例では耐性の可能性があるのに感受性ありの結果出ることがある。 FCS、THの耐性検査結果は変動が多い。 不完全耐性の定義 薬剤培地上の菌集落が対照培地の75%以下なら不完全耐性。 完全耐性菌と感性菌の混在の可能性。 対照培地が4+で薬剤培地で20コロニー以下の(少数)というのは接種菌量が多すぎ たという可能性が高い。 |
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耐性頻度1977-92年のデータ(日本) @未治療例:SM 4%、INH、RFP、EBは1% A再治療例:INHかSM耐性は15〜20%、SM耐性は10%、EB耐性2〜5%、INHとRFP耐性(多剤耐性)は10% |
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6ヶ月短期治療適応推奨例 @ガフキー3号以上の大量排菌者 A脱落の予想されるもの B短期入院希望者 塗抹陰性例など病巣内結核菌の少ない例では従来法でよい。 6ヶ月短期治療適応除外例 @HRZS(またはE)に過敏症のある人 A急性肝障害、重症肝障害のある患者 肝障害がGOT、GPTがどの程度からという定説はない。 B80才以上の高齢者 |
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初期強化療法の延長 HRZE(S)治療を2ヶ月以上延長しても効果は増強しない。INH・RFP耐性例ではこの療法でも排菌が減らないこともあり、感受性薬剤3剤以上に変更する。 注)PZAの使用期間延長についての別の意見 和田 ・・・略。しかし,最近ニューヨーク市の結核対策の中で,薬剤感受性がわからない例については4剤餅用し,PZAを2カ月で終了すべきではないといわれています。 特集 再興感染症としての肺結核座談会 結核診療の今日的な在り方(抜粋) 日本内科学会雑誌 89(5):116-138 平成12年5月10日 |
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再治療者 A 昭和50(1975)以前のSM・INH・PAS治療をうけいままで再発のなかった者 KM・EB・RFP・PZA(最初の2ヶ月)の4者で開始。 B 昭和50(1975)以降の短期治療を受けたが、治療中断者 @長期の不規則中断がない例 SM(EB)・INH・RFPの短期化学療法 A再度途中中断しそうな例 2HRZE(S)/4HR(E)6ヶ月療法 C 昭和50(1975)以降の短期治療を受け、終了した者 HRE(S)または2HRZE(S)/4HR(E)で開始、耐性検査が分かればその時点で変更 D 排菌持続例、前回治療時に複数薬剤に耐性 @耐性検査が分かるまで既使用薬剤を使う A6ヶ月以上使用した薬剤と耐性化した薬剤を除外し、残り薬剤の上位3〜4剤を選択、SM、KM、EVMは重複使用は出来ない。 BAにニューキノロン剤を加える。 C外科治療の選択 D手術不可能れには化学療法のない時代の安静療法、長期入院、INHの単独治療を行わざるを得ない。 |
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耐性検査による薬剤変更 Aの場合 序列の高いSM・INH感性であれば、KM・EBをSM、INHに変更する B、Cの場合 耐性が分かった段階で、序列に従い他の感性薬剤に切り替える Dの場合 感性薬剤でも6ヶ月使って排菌が止まらなければ変更する。(特にEB、SM、EVM) PZAの使用歴がなければ使用する。 多剤耐性で外科適応のない例では感性薬剤3〜4剤にニューキノロンの併用 さらに感性薬剤のないものではINH単独治療で新薬の開発を待つ |
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排菌停止例の治療終了時期 @A、BでINH、RFP、SM、EBに感性なら初回治療に同じとする。しかし再治療例は初回治療例より3〜6ヶ月延長との意見もある。 ACはPZA使用例では9ヶ月、使用不可例では12ヶ月 *:INH、RFPのどちらに耐性のある場合 排菌陰性時点からさらに1年間、あるいは全治療期間で2〜3年 *:INH、RFPの両剤に耐性のある場合 排菌陰性時点からさらに1〜2年間、あるいは2〜3年 患者個々に主治医が判断して終了時期をきめるしかないのが現状 |
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入院適応 塗抹陰性例であっても粟粒結核、髄膜炎など重症肺外結核、喀血、高熱などを伴う塗抹陽性の肺結核。 入院期間は結核菌の薬剤感受性試験の結果が判明し、副作用の対処が出来る最低限度の期間、約2ヶ月くらい。 日本では入院期間は短縮の傾向であるが、そのため脱落例、不規則治療が増加し、耐性菌感染の頻度が増加したという報告はない。 多剤耐性菌感染例は原則として入院治療が必要。多剤耐性菌例は感性菌より感染力が弱いというのは間違いである。(注:古い本にはそう書いてある。) |
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抗結核剤 |
1%小川培地/ 固定濃度法 | NCCLS M24-T勧告法 |
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Middlebrock 7H10(agar) agar proportion 法 |
Middlebrock 7H12(broth)/ radiometric BACTEC法 |
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INH | 0.1, 1.0μ/ml | 0.2, 1.0μg/ml | 0.1, 0.4 |
SM | 10, 20 | 2.0, 10 | 2.0, 6.0 |
RFP | 10, 25, 25 | 1.0 | 2.0 |
EB | 2.5, 5.0 | 5.0, 10 | 2.5, 7.5 |
PZA | N/A | 25または50 | 100 |
TH | 25, 100 | 5.0 | N/A |
CPM | 25, 100 | 10 | N/A |
CS | 20, 40 | 30 | N/A |
KM | 25, 100 | 5.0 | N/A |
PAS | 1.0 | 2.0 | N/A |