抗結核薬の副作用とその対策
日本内科学会雑誌89(5)831-1052,2000
結核医療の基準とその解説
INH
RFPとの併用で副作用が強くなるといわれる。RFPがN-acetyl−transferase2(NAT2)の産生を誘導する。NAT2はINHをヒドラジンに分解し、ヒドラジンの産生が多くなる。このヒドラジンが肝障害を起こす。
INHがVB6の代謝を促進、INHがVB6と結合して尿中に排泄される。このことから末梢神経炎防止のためにはVB6の投与が有効である。
RFP
肝酵素のcytochrome P450-3Aの強力な誘導作用があり、この酵素で代謝される種々の薬剤の代謝が促進される。
SM
第[脳神経障害は容量依存性で、不可逆性である。初期には難聴よりも前庭障害(めまい)が多い。腎障害はKM、EVM、CPM、SMの順に起こりやすい。
EB
球後視神経炎は容量依存性に出現する。頻度は1%以下である。色覚低下、視力低下、視野狭窄が出た場合は中止。副作用は可逆的である。
VB12の大量投与が有効である。
PZA
PZAの代謝産物ピラジン酸が腎尿細管での尿酸の分泌を抑制し、血清の尿酸値が上昇する。
TH
抗結核剤の中ではもっとも副作用が多い。
CS
INHやTHはCSの神経毒作用を促進する。
INH,RFPに対する減感作療法の試案 (日本結核病学会治療委員会)
 イソニアジド(INH)またはリファンピシン(RFP)の使用によって,発熱あるいは発疹の副作用が出現した場合には,以下の方法により減感作療法を行う.
 まず速やかに当該薬剤を中止し,副作用に対する適正な治療を行う.
 同時に,リンパ球刺激試験(DLST)や白血球遊走阻止試験(LMIT)などによって,可能な限り原因薬剤を同定する.
 その結果,あるいは臨床症状から原因と考えられる薬剤がみられた場合には,副作用が改善した後,下記に示すような方法によって減感作療法を施行する.
 なお.両薬剤に対して副作用がみられる場合には1剤ずつ減感作療法を行う

INH
RFP
第1日
2
   3
   4
   5
   6
   7
   8
   9
  10
  11
  12
  13
  14
  15
  16
 25(mg)
  25
  25
  50
  50
  50
 100
 100
 100
 200
 200
 200
 300
 300
 400
 400
 25(mg)
  25
  25
  50
  50
  50
 100
 100
 100
 200
 200
 200
 300
 300
 300
 450

注:1)減感作は発熱あるいは発疹が対象である.
  2)上記の方法によっても何様な副作用が出現し,不成功な場合もある.
  3)減感作時,以下の副作用が出現した場合には,以後当該薬剤は使用しない.
   (ショック,溶血性貧血,問質性肺炎,腎不全,紫斑)
抗結核薬の主な副作用
薬剤副作用
INH末梢神経炎,肝障害,発熱,精神障害,SLE様症状,女性化乳房
RFP肝障害,胃腸障害,アレルギー症状(発熱,発疹,インフルエンザ様症状,血小板減少,溶血性貧血)
PZA肝障害,高尿酸血症,関節痛,胃腸障害
SM第8脳神経障害(平衡障害,難聴,耳鳴),腎障害,発熱,発疹,アナフイラキシーショック
EB視神経炎,胃腸障害,末梢神経炎,精神障害
KM第8脳神経障害(平衡障害,難聴,耳鳴),腎障害,アナフイラキシーショック
PASアレルギー反応(発熱),胃腸障害,肝障害,腎障害
TH胃腸障害,肝障害,発熱,発疹,精神症状(不眠,不安,抑うつ)
CS精神症状(めまい,振戦,痙攣,精神錯乱,不眠),胃腸障害
EVM第8脳神経障害(平衡障害,難聴,耳鳴),腎障害,アナフイラキシーショック,電解質異常
CPM第8脳神経障害(平衡障害,難聴,耳鳴),腎障害,アナフイラキシーショック

NAT2の人種特性
slow acetylator(SA)日本人10%、コ−カサス人50%。SAタイプはINHの副作用が出やすい。白人でのINH投与量が少ないのはこのためか?

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