特集 再興感染症としての肺結核
DOTS(Directory Observed Treatment, Short-course)(要約)
日本内科学会雑誌 89(5):81-85 平成12年5月10日
塚口勝彦(奈良県立医科大学第2内科)
成田亘啓(奈良県立医科大学第2内科)
DOTSの問題点および将来性
●結核高度蔓延国では切り札的存在であるが我が国では必ずしも明らかではない。
(高島毛俊雄:都市の結核問題、資料と展望 29:11-22 1999)

●我が国でのuniversal DOTS(対象を全患者にする)の必要性については疑問である。
*:米国1960年MouldingはDOTSは全患者を対象とする必要はなく、指示に従わない患者に限定するとした。しかし、Sharbaroのデンバーのgeneral Hospitalの治療経験から対象患者の75%が規則正しい服薬をしていなかった。監視下投薬が全患者に必要とした。

●日本では老人結核、家族内感染、院内感染が重視され、治療中断者が感染源となっているか明かではない。米国と違い日本では入院が主体、公的医療機関だけでなく民間医療機関でも行っているという事情もある。

●DOTSは強制措置を伴い、結核罹患が周囲に明らかになり、人権の面で問題がある。

●日本では、他国で実施されているDOTSをそのまま導入するのは特定地域除いて不可能であり現実的ではない。

●日本では特定地域で可能な場合はuniversal DOTSを行い、すでに高い治癒率を上げている地域では個別対応するのがよい。量的ではなく質的対応がよい。

●将来結核治療を外来対応で行うなら、通院中の服薬監視は現在より厳密に行う必要があり、DOTSは必要である。
私見)なんでもかんでも米国のまねというのでは問題。DOTSについてもこの内容のように外来治療者に対して行うべきものである。入院患者については90%近くの患者が排菌なしで退院しているのでDOTSをしなくても治癒率はDOTSかそれ以上の成績である。
むしろ米国でDOTS後の再発がどの程度に発生しているかこのあたりのデータがほしい。まだそこまでの長期調査は出来ていないはず。

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