RFLP(Restriction fragment length polymorphism)
結核菌のDNAを特定の制限酵素で切断し、ゲル上に電気泳動すると切断されたDNAフラグメントの長さにより多数のバンドが検出され、結核菌株が異なればこの泳動パターンが異なる。

集団感染の際、複数患者の菌のRFLPパターンが一致した場合、同一菌から感染した可能性が考えられる。

DNAに変異があると制限酵素で切れたり、切れなかったりしてDNA断片の数や大きさが異なってくる。それが電気泳動のパターンの変化になってくる。


IS6110を用いたRFLP解析
 これまでの報告では、IS6110は結核菌に通常5−20コピー存在しているが、1コピーのみや存在しない場合もある。通常コピー数が5以下の場合は、DR配列やPGRSなどの他のプローブを用いたRFLP解析によって型別を行う。

 結核菌菌体からDNAを抽出し、制限酵素PvuUで分解後アガロースゲル電気泳動によりDNA断片を分離する。
ゲルからサザンプロソテイングによりDNA断片をナイロンメンブランに転写し、UV照射によってメンプランに固定する。

 IS6110DNAの一部(245bp)を用いて標識DNAプローブを作成し、ハイブリダイゼーションを行う。ハイブリデイゼーション後、プローブと反応したメンブラン上のDNA断片を検出し、RFLPパターンを得る。数株間での比較はそのままパターンを比較するが、多数の菌株あるいはクラスター解析をする場合はコンピュータ解析を行う。

 IS6110のRFLPパターンは菌株の継代培養を繰り返しても変化せず、また患者の長期にわたる継続排菌中でも全く変わらないか、変化しても1本のバンドの増減程度であることから、かなり安定であることが示されている。得られた各菌株のRFLPパターンの種類は非常に多く、多型性であることが示されているが、明らかな集団事例や共通の感染源が明らかな事例の場合は同一のパターンを示し、感染源・感染経路の追求に非常に有用であることが明らかにされている。

 また、保持するIS6110のコピー数とRFLPパターンのクラスター分析から分離菌株間の類似性を調べ、特定地域あるいは国全体の結核菌株のRFLPパターンのデータベースを構築し、結核蔓延状況の解明のために利用されている例も多数報告されている。現在、IS6110を用いたRFLP解析は世界中で行われており、その方法は国際的に標準化を図られ、国際的なデータ比較が可能になりつつある。
『結核の分子疫学−結核対策における有用性』 長谷 篤 生活衛生 44(3)111-116より一部抜粋
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