慢性排菌患者の感染性について 結核病学 U疫学・管理編(平成5年一部改訂版)より |
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
慢性排菌例の感染源としての危険性については,このような患者の家族と,当初は排菌していたが,順調に菌が陰性化した症例の家族の発病状況を比較した斉藤3)の成績がある。表2−2に示したように排菌持続例の家族の発病率は,対照群に比し高くはなっていない。
この理由として,次の三つが考えられる。 @排菌は持続していても,菌量は少ないことが多い。(塗抹で陽性でも,培養でのコロニーは少ない場合が多い。) AINH耐性菌の毒力は人に対しても低下していると推定される。(INH高度耐性菌は,動物に対する毒力が著明に低下している。図2−3に示した薬剤の種類と濃度別に,既往治療有無で耐性の頻度の相関をみた成績では,両者に密接な相関がみられているが,INHの高度耐性だけは既治療群には多いが,未治療群では極めて低く,INH高度耐性菌では感染が起こりにくいのか,感染しても発病しにくいのか、そのいずれかであることが示唆されている。 B本人も周囲の人も,排菌を知っているので,感染に注意している。 ただ最近米国でのAIDS患者を収容している病院で,多剤耐性患者が感染源となって起こった集団感染の事例をみると,INH耐性菌でも感染,発病が起こっており,免疫が低下した個体ではINHを含む多剤耐性菌で感染が起こると考えて対処する必要がある。 |