非定型抗酸菌症の治療(3)
複十字病院医療部長  水谷 清二
結核予防会ホームページ 抜粋
 MAC症の治療
 a 適切な薬剤感受性試験法はない
 MAC症の場合、現在使用されている結核菌のための感受性試験の結果はまったく参考とならない。通常エチオナミド、サイクロセリンをのぞいて耐性。上記2剤を使用しても改善は得られず、時には増悪さえ観察される。

通常の抗結核薬は、単剤では効果は期待できず、MAC症においても多剤併用した場合治療効果が増すことが観察されている。

 b 現在推奨される薬剤/期間
 クラリスロマイシン(CAM)、エタンブトール(EB)、リファンピシン(RFP)、ストレプトマイシン(SM)、カナマイシン(KM)、などである。
ニューキノロン剤の併用効果を指摘する者もある。

このうちCAM(クラリス:1T200mg)は現在第一選択剤と位置付けられている。通常一日600mg以上の使用が推奨される。可能であれば体重1kgに対し15mg程度が良いとされる。
EBは第2選択剤とされる薬剤である。その理由としてEBがNTMの膜の薬剤透過性を増強し、薬剤が浸透しやすいことがあげられている。

その他SM/KMは注射薬であること、副作用などの問題から老人には使用しにくい薬剤であるが、ぜひ使用したい。一部症例の再治療時も含めて効果が実感される薬剤といえよう。

 治療期間は少なくとも1年は見ておくべきである。マイシンは少なくとも6ヶ月、有効例ではより長く使用したい。

表1 アメリカ胸部学会の治療勧告案(1997)
初回の症例であれば60〜70%の確率で排菌停止が期待される。しかし長時間安定している症例は少なく、半数程度とされる。また注意すべきこととして、微量排菌例などで化療を止めた数カ月後に再悪化する例が観察されるため、注意深い観察が必要である。

排菌停止は多くは3カ月以内であり、6カ月以後のものは少ない

CAMを含んだ治療で1年間排菌陰性を得られれば終了することも可能であるとしている。再治療の予後は通常不良であり、かつては10%程度の排菌陰性化率であった。現在では多少改善しているものと考えられるが、大きな改善はなされていないようで今後の課題である。

その他の薬剤として前述のニューキノロン以外にクロファジミン、アミカシンも挙げられている。クロファジミンはハンセン病の治療薬剤であるが皮膚の色素沈着、うつ病など深刻な副作用があり、使用には慎重な配慮が要求される。 
カンサシ症の治療
 RFP登場以前は、10%程度の再燃が認められたが、現在では治療容易な菌種と言える。
薬剤感受性試験はRFP以外の薬剤については信頼でない。50μ 完全耐性の場合は使用を中止すべき

INH0.1μ 完全耐性が90%以上で認められるが、使用を継続して問題はない

RFP耐性の場合ニューキノロン剤、ST合剤、エチオナミドが有用である。幸いに本邦ではRFP耐性例は極めて少ない。化療期間は現時点で1年とされている。本症は結核類似の画像所見のため結核としての化療が開始されるものが多いが、PZAは耐性であり併用してはならない
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