結核 カリフォルニア州で調査
全体数著減するも多剤耐性の割合は変わらず
Medical Tribune 2005.7.7号より
〔シカゴ〕米疾病管理センター(CDC)のReubenM.Granich博士は,カリフォルニア州では結核(TB)の症例数が顕著に減少したものの,多剤耐性結核(MDR−TB)の割合は減少していないとJAMA
(2005;293:2732−2739)に発表した。
公衆衛生に依然大きな影響
 カリフォルニア州ではTBの届け出数が1994〜2003年に33%減少しているにもかかわらず,依然として公衆衛生上の大きな問題であり,2003年には233例が死亡している。

 同州の症例数は2003年に全米で1位となっている。さらに,治療の成功率が高い一方で,イソニアジドやリファンピシンなどの第一選択薬に耐性を示すMDR−TBの発生は続いている。これらの生命を脅かす空気感染細菌株に対しては18か月以上の長期治療が必要で,治療に失敗する率が高くアウトカムもよくないため,TB管理対策の有効性が損なわれている。

 MDR−TBの治療にはかなりの専門知識と医療資源が必要である。米国ではMDR−TB患者1人当たりの医療費は2万8,217〜127万8,066ドルと見積もられている。またMDR−TBは,同州などでは病院や地域社会において大規模で深刻な発生が認められる。

 Granich博士らは,同州のTBサーベイランスシステムの薬剤感受性データを分析し,薬剤耐性TBの規模,傾向,地理的分布,臨床的特徴,危険因子,アウトカムを調べ,同州のTB管理へのMDR−TBの影響をさらに分析し,公衆衛生面からの介入を計画した。この分析では,1994〜2003年に同州の仝61医療地区からTB3万8,291例が幸陪されている。MDR−TBは少なくともイソニアジドとリファンピシンに耐性があるものと定義されている。

 報告されたTB例のうち2万8,712例(75%)について耐性があるかどうかを検討し,そのうち407例(1.4%)がMDR−TBで,38地区(62%)から報告された。MDR−TBの割合は研究期間中顕著な変化は見られなかった。

  海外での出生と強い関連
 MDR−TB症例は,以前に治療を受けたと報告した割合が非MDR−TB症例に比べて7倍であった。アウトカムの判明しているMDR−TB症例345例中231例(67%)が治療を完了したが,MDR−TB症例はそうでない症例に比べて治療を完了する者が有意に少なかった。さらにMDR−TBに関連する背景として,
@TBの診断歴
A顕微鏡下で暗疾のTB菌検査結果が陽性
Bアジア系または太平洋諸島系の民族
C診断時に米国転在5年以内
−などがが判明した。

 Granich博士は「われわれの所見は懸念すべきもので,またカリフォルニア州のMDR−TB症例は@MDR株が州外から移入された
Aカリフォルニア州内での不十分な症例管理ないしは治療によりMDR株が内部的に成長した
B感染が持続している
−の3つの理由のいずれかにより生じたことを示している」と述べている。

 MDR−TBは米国外での出生と強く関連している。同症例の83%が30か国に及ぶ外国生まれであることから,国外でのMDR−TBの発症と感染を予防するなどの国際的なTB管理の重要性に加えて,他の高リスク群を網羅するスクリーニングプログラムを海外に広げ,さらにMDR−TBが発症したら即座に診断し治療することを確実に行う方策が必要であると考えられる。

 このほか,今回の研究でMDR−TBの発生を防ぐために示唆されたこととして,
@推奨されているTB治療ガイドラインのコンプライアンスを改善する
A移動したり追跡不能になる患者が多いことなどへの対策が必要である
BMDR−TB症例の割合が,医療資源や知識の限られている農村部の小さな医療地区で多く,さらに増加していると見られるため,スタッフの追 加,優れた地域センタ一,臨床上の相談に乗る電話相談サービスなどの医療資源がさらに必要である
−ことを挙げている。

 実際,MDR−TBには薬剤レベル,第二選択薬感受性,腎機能の集中的なモニタリングが18〜24か月にわたり必要であるにもかかわらず,これらの管理に習熟した臨床医が減少していることから,MDR−TBの脅威が増していることは確かである。

 こうしたMDR−TB患者を管理する地元のプログラムの努力を支援するため,カリフォルニア保健福祉省TB管理部門は,臨床サポートを行い,モデルセンターと協力するMDR−TB臨床サービスを確立しており,いくつかのTB診察医学訓練センターを支援するCDCの事業に参加する予定である。

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