結核予防を阻む多剤耐性菌 旧ソ連と中国などで高い陽性率
]Medical Tribune 2007.3.8
要約)
WHOと抗結核薬剤耐性サーベイランスに関する結核と肺疾患に対する国際協力機構世界プロジェクトの分析結果。(Lancet 2006:368:2142-2152)
76各国での1999-2000年の新規登録発症結核でINH、RFP、EB、SM4剤のいずれかに耐性菌陽性率の中央値は10.2%、MDRの陽性率の中央値は1.0%。
MDRの陽性率はカザフスタン56.4%、リトアニア53.3%、エストニア45.3%、ロシアのトムスタ州43.6%、オレル州42.4%、ウズベクスタン40.2%、中国河南省36.6%、ラトビア27.1%、中国遼寧省20.8%。(日本のMDR陽性率は1997年で19.7%
ロシアでは新規症例のMDRが上昇顕著だが香港、米国では低下傾向。

中国、ロシアでのMDRは考えられていたより流行が広汎である。
第二選択薬主要6種の内3種以上に耐性(XDR)を引き起こす可能性がある。
致命的な菌株感染を予防するためあらゆる手段を迅速に実行すべき。
耐性陽性率中央値はSM6.3%、INH5.9%でこの2剤に高い傾向。
RFP耐性陽性率は1.4%、EBでは0.8%で低い傾向。

MDR陽性率の高い地域の特徴は
・過去に適切な結核管理が行われていない、
・抗結核薬が適切な管理なしに行われた
・国際的に推奨された結核予防対策が行われていない
MDR治療には費用がかかり、治癒率が低い(6〜59%)

2004年のMDR結核は世界で42万4000人
・新規・既治療症例の4.3%に相当
・25万人が中国、インド、ロシア、この3カ国でMDRの62%

推定で世界人口の約3分の1が結核に感染し、毎年870万人が発症し、約200万人が死亡。(2004年)

・米国2004年の移民の結核調査結果
 メキシコ 1976人、フィリピン829人、中国352人、ハイチ248人、韓国219人、グアテマラ190人、エチオピア169人、ペルー159人。
※中央値
 中央値(median) とは、代表値の一つで、有限個のデータをソートしたとき、中央に位置する値。
 データの分布が対称なら、中央値は平均値に等しい

私見)
中国は宇宙開発、オリンピックも結構だがもっと結核対策にも力を入れないと自滅することになる。
日本も他山の石ではない。対策をけちるとニューヨークの二の舞になる。

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