妊娠中の抗結核治療
●PZA
米国胸部学会は妊娠中の安全性が確認されていないので使用を勧めていないが,WHOは勧めている。
●SM
SMは胎児への第八脳神経障害のリスクが高いので妊娠中は使用してはならない
●KM EVM CPM
胎児の聴力障害のため避ける。
●抗結核薬でTHを除いて催奇形性が確実に証明されたものはない。
最も安全なのはINH EB併用、重症ならRFPを追加。
●授乳
ATSは、first-line drugsを使用している限りでは、母乳への抗結核薬の移行は微量で乳児に副作用を認めることはないので授乳をすすめている。(Am J Respir Crit Care Med 149:1369,1994)
●妊娠 ・出産に関連する活動性結核の治療および取り扱いについての検討 Kekkaku Vol.77,No.11:703-708,2002
妊婦へ の予防内服 について は,出 産前の予 防内服の有用性はあるもののCDCは肝機能障害の頻度が高いことより、INHの予防内服妊娠中を避けて出産後に行うよう勧めている。われわれの施設 で も妊娠 中にINH予 防内服 した3例 を経験 した。20週 を過ぎてか らINH6カ 月の服用を開始 して肝 障害 もな く正常に経過 し出産 した(た だ し活動性結核で はないため今回の検討か らは除外 した)。
●抗結核薬の母体 や胎児への安全性
多 くの報告が されてはいるものの十分 なエ ビデンスはない。1980年Sniderらは過去 報告を集計 し,主要薬剤 についての危険率 を算出 し,非 結核 の妊婦 と流産死産,早 産 についての有意差 はな く、胎 児 ・生下時の新生児 の異常 についてSMの 聴 覚障害が16.9%と 高 いが,INH,EB,RFPで は有意差 はな くPZAで はデー タが乏しく,結 果 としてINH,EBが最も安全 と言 って いる。
 RFPについてはSteenら が229例 中9例 とい う高頻度の催奇性を報告してお り,中枢神経系,次いで骨筋 肉系の奇形で、四肢の形成不全に限定すると、一般の妊婦の 435件 に1件(0.2%)に 対 しRFPを 服用 した もの で は150件 に1件(0.6%)で 一般妊 婦 の約3倍 高頻 度 となるが,統 計 的有意差 はなかったと報告 している1文 献 がある。
 WHO・ATS・BTSは それぞれ妊娠 ・授乳 中の結核 治療 につ いて ガイ ドライ ンを提 示 してい るが,治療薬 よりも結核 自体 の リスクが最 も大 きく,結 核治療 をすることは人工中絶 の適応にはな らないこ とが共通 に述べられている。 抗 結核 薬ではSM以 外 には明白な催奇性 リスクの証拠はな くPZA,CS,THは データが不十分で,各々推奨す る レジ メ ンが 多少 異 な ってい る。WHOとBTSはPZAを 含 むス タンダー ドを,ATSはINH・RFP・EBに 加 えVB6の 併用 を勧 めている。 さらにBTSはTHの神経系の障害のデー タを重要視 してい る。われわれの施設 で は,20週 以前で はINH,RFP,EBと 重症例 ではPZAを 加 え,そ の他 の時期 で はPZAを 含 む4剤投与を原則 としている。
 授乳 についてはいず れの抗結核薬 も母乳へ移行するが,乳児 の血 中濃度 は問題 となる量で はな く,逆に予防内服にはな らないこ とに注意 を喚起 してい る
・妊婦の服薬(Aoki M:日本胸部臨床 2001;Vol.60, No.2:143-44)
・妊娠中の服薬(Toyota E,et al:Kekkaku Vol77,No.11:703-708,2002)
●抗結核剤の添付書内容抜粋
●RFP
妊婦、産婦、授乳婦等への投与
1.妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、投与しないことが望ましい。8)[動物実験(ラット、マウス)で催奇形作用が報告されている。]
2.授乳中の婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。[ヒト母乳中へ移行することが報告されている。]
●INH
妊婦、産婦、授乳婦等への投与
1.妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には投与しないことが望ましい。[動物実験 (マウス) で胎児の発育障害作用が報告されている。また、アミノサリチル酸製剤を併用投与されている患者で、奇形を有する児の出現率が高いとする疫学的調査結果がある。]
2.授乳中の婦人には本剤投与中は授乳を避けさせること。[ヒト母乳中へ移行することがある。]
●EB
妊婦、産婦、授乳婦等への投与
1.妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。[妊娠中の投与に関する安全性は確立していない。]
2.授乳中の婦人には、本剤投与中は授乳を避けさせること。[ヒト母乳中へ移行することが報告されている。]
●SM
妊婦、産婦、授乳婦等への投与
1)妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。 [新生児に第8脳神経障害があらわれるおそれがある]
2)本剤投与中は授乳を避けさせることが望ましい。[ヒト母乳中へ移行する]
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