142:潜在性結核(LTB))にはリファンピシン
リファンピシン4カ月とイソニアジド9カ月を比較
 研究は、成人を対象とした4カ月のリファンピシンと9カ月のイソニアジドを比較したオープンラベルランダム化比較試験である。28カ月後までの活動性結核の発症があるかどうか。オーストラリア、ベナン、ブラジル、カナダ、ガーナ、ギニア、インドネシア、サウジアラビア、韓国という多様な経済状態、多様な文化圏、そして多様な人種を対象に行われた多施設試験である。

 この研究は、リファンピシンがより優れている(superior) という前提で、各群3,283人というサンプルサイズを計算している。また、リファンピシンの非劣性を検証するため、イソニアジドの効果を90%、リファンピシンの効果は65%と考え、検証した。

 実際に研究に参加したのは、イソニアジド群2,989人、リファンピシン群3,023人であった。両群の平均年齢は38歳程度で男性が約4割、HIV感染率が約4%で、その他両群に大きな違いはなかった。治療完遂率はイソニアジド群63.2%、リファンピシン群78.8%と、大きく異なっていた(リスク差15.1%、95%信頼区間12.7〜17.4%)。Intention to treat(ITT)解析では、活動性結核確定例はイソニアジド群9例、リファンピシン群8例で、100人・年当たりの結核発症数はともに0.05だった(rate difference <0.01)。per-protocol解析でも両群に差はなかった。有害事象の発生率はイソニアジドの方が高く(5.8% vs. 2.8%)、有害事象による服薬中止もやはりイソニアジド群で多かった。特に、重篤な肝障害(グレード3、4)はイソニアジドで多かった(1.8% vs. 0.3%、P<0.001)。
 米国疾病対策センター(CDC)は、TB治療のファーストラインをイソニアジドとrifapentine(にほんでは未承認))週1回の3カ月治療としている。2番目に挙げられているのがリファンピシン4カ月治療だ。もはや、イソニアジド9カ月は標準治療とは呼べない(間違った治療でもないが)。リファンピシンの服用は4カ月。イソニアジドの半分以下である。肝障害などの副作用もより少ない。患者は外来に長い間通院するのを苦痛としている。リファンピシンの恩恵は非常に大きい。

岩田健太郎の論文

日本の患者(高齢者が多い傾向にある)においてもLTBI治療ではRFPの方がINHよりもメリットが大きい。先行研究の結果と同じであり、この結論は妥当性が高いと思う。また、日本の結核菌はRFPよりもINHへの耐性を示す菌が多い。そういう観点からもRFPの方がベターな選択肢である。

すでに米疾病対策センター(CDC)はLTBI推奨レジメンからINHを外している。海外ではRFPとINHの3カ月治療がファーストチョイスである.。
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